『エストフォルド・サガ』に登場する人物、地名、文中の用語を解説した事典です。
人名の後の赤い数字は、登場する章を表しています(故人を除く)。ss は番外編。

あ ~ お

アース神族
ヴァイキング時代の北欧(スカンディナヴィア)で信仰されていた神々の一族。
神々は巨人族との最後の戦い(ラグナロク)を控えていて、戦死した人間をヴァルハラと呼ばれる館に迎え、戦いに備えているといわれる。

アスラク Aslak 6, 8, 9, 11
エストフォルド侯の従士長。
エストフォルドで唯一、オーラヴに匹敵する凄腕の剣士で、オーラヴの信頼も厚い。

アストリーズ Astrid 1, 2, 9, 10, ss
オーラヴの姉。デンマークの領主夫人。
金髪、蒼灰色の瞳。ヘゼビューの市場で出会ったヒルダと仲良くなる。

イェリング Jelling
ヴァイキング時代のデンマークの王都。
現在は小さな町で、のどかな風景に癒される田舎であるが、ハラルド青歯王(スヴェン双髭王の父)が建立したルーン石碑が残されている。

ヴァイキング Viking
8世紀末~11世紀初めにかけて欧州の広い範囲で荒稼ぎしていたスカンディナヴィア(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)の北欧人たちのこと。
野蛮な海賊、掠奪者として捉えられがちであるが、彼らは優秀な船乗りであり、冒険者であり、交易商人でもあり、航海に出ていない時は故郷で農業等に従事していた。ヴァイキング遠征は「掠奪」と「交易」が半々で、王や侯(ヤール)、裕福な首長がヴァイキング遠征を指揮することもあった。
物語中では便宜上、解りやすくするために「ヴァイキング」という呼び方を使っているが、実際には当時の彼らは「ヴァイキング」と呼ばれたわけではなく、イングランドでは「デーン人」(デンマークだけでなく北欧人の総称)、フランスでは「ノルマンニ」(ノルマン人)と呼ばれていた。
いわゆるヴァイキング時代とは、一般的に西暦790年頃~1066年頃を指す。
西暦793年、スカンディナヴィアに住む北欧人がスコットランドのリンディスファーン修道院を襲撃した事件がヴァイキング時代の始まりとされ、その終焉は、1066年のノルマン・コンクェスト(ヴァイキングの子孫であるノルマンディー公ウィリアム=フランス名ギョームがヘイスティングスの戦いに勝利し、イングランドの王位に就いた)とする資料が多い。

ヴェンドランド Wendland
現在のポーランドあたりに存在した国。地理的な要因から、スカンディナヴィア諸国とは密接な繋がりがあった。

エイムンド Eymund 6, 7, 9, ss
エストフォルド侯家の重臣で歴戦の勇士。オーラヴの養父(当時の北欧では王族や貴族が実子を他家で養育してもらう習慣があった)。

エストフォルド Estford
ノルウェー南東部の地域名。此処に侯家があったとするのは、作者の創作。

エリク・ハラルドソン Erik Haraldsson ss
オーラヴの父。先々代のエストフォルド侯。故人。

エリク・ホーコナルソン Erik Håkonarson 7, 8, 9
ノルウェー人。トリュグヴァソン王に斃されたラーデのホーコン侯の長男。実在した人物。

エルリング・スキャルグソン Erling Skjalgsson 6
ホルダランドの侯(ヤール)。ノルウェー西部の領主の一族出身で、トリュグヴァソン王の姉と結婚したことでホルダランド侯に格上げされた。実在した人物。

オツール・アガソン  10, 11
デンマーク王女ティーレの養父。実在したと思われる人物。

オーディン Odin
ヴァイキング時代のスカンディナヴィアで信仰されていた神々・アース神族の主神。
二羽のワタリガラス(フギン「思考」、ムニン「記憶」)を従えていて、鴉たちはオーディンに世界中の様々な情報を伝えている。

オーラヴ・エリクソン Olav Eriksson 1 ~ 11, ss
エストフォルド(ノルウェー南東部)の侯(ヤール)。
金髪白皙、蒼灰色の瞳。すらりとした長身。華やかな美貌の持ち主で、名高い詩人にして戦士。兄の死により侯家を継ぐ前はヴァイキングの首領だった。
自信家で頑固、物事を皮肉っぽく考える癖がある。
通称はオーレ(Ole)、綽名は「放浪詩人」だが、侯家を継いだことから詩人は休業中。

オーラヴ・トリュグヴァソン Olav Tryggvason 6, 8, 9, 11
実在したノルウェー王(在位 995~1000)。ノルウェーをキリスト教化することで国内統一を目指している。

オーロフ・シェトコーヌング Olof Skötkonung 7
実在したスウェーデン王。父称はエリクソン(Eriksson)。


か ~ こ

カイ Kai 2, 3, 4, 5
ドイツ出身の商人で、ヨークで宿屋と酒場を経営している。
黒に近い濃褐色の髪、琥珀色の瞳。ヒルダより3歳年上の幼馴染み。

ギーゼラ Gisela 2 ~ 11
カイの妹。
金髪、琥珀色の瞳。ヒルダとは同い年で親友。

クラウス Klaus 1, 2, 5, 10
ヒルダの父。交易商人。
淡褐色の髪、青色の瞳。主にヘゼビュー(デンマークの交易都市。現在はドイツ領)やイングランドで商いをしている。

グンナル Gunnar 6 ~ 11
オーラヴの従士の一人。身長2メートルを超す巨漢。忠義に篤く、戦士としての能力も高いことから、ソーロールヴによって侯(ヤール)の護衛に抜擢された。


さ ~ そ

サクソン人
ヴァイキング時代のイングランドに住んでいたゲルマン系の部族。
元々の出身地はドイツで、4世紀後半~5世紀にかけて部族の一部がブリテン島に移住し、アングル人やジュート人と合わせてアングロ・サクソン人となった。

シグヴァルディ Sigvardi 9, 11
ヨムスヴァイキングの首領にして侯(ヤール)。
妻はヴェンドランド王ブリスラフの娘アストリーズで、デンマーク王スヴェン、ノルウェー王オーラヴ(トリュグヴァソン)の義兄弟であった。

シグテューナ
ストックホルムとウプサラの間に位置するヴァイキング時代後期のスウェーデンの王都。
10世紀末、キリスト教徒のオーロフ・シェトコーヌング王が異教の影響が残るウプサラから王宮を移した。メーラレン湖畔に築かれた町は、それまでスウェーデン随一の商業都市として知られていたビルカに代わり、経済の中心地にもなった。現在は小さな町であるが、最古の石造建築といわれる教会の廃墟やルーン石碑が残存。また、世界一小さい市庁舎がある。

シグリーズ Sigrid 3, 4
スウェーデン王の従姉妹にして東イェートランド侯の娘。
プラチナに近い金髪、氷蒼色の瞳。

シグリーズ女王 Sigrid, Queen of Sweden 7, 10
オーロフ王の母。エリク常勝王(先のスウェーデン王)の未亡人。実在した人物。

シグルーン Sigrun 
オーラヴの母。故人。絶世の美女と謳われ、エストフォルドの領民達に慕われたという。

スヴェン・ハラルドソン Sven Tveskæg  9, 10, 11
実在したデンマーク王。綽名は双髭(英語では Forkbeard)、父称はハラルドソン(Haraldsson)。

ソーラ Thora 6, 7, 9
オーラヴの叔母。先々代の侯(オーラヴの父エリク)の妹。
義姉が早く亡くなったため、侯家の女主人代わりを務めている。

ソーリル Thorir 8
エストフォルド侯家お抱えの鍛冶職人。
元は奴隷の身分だったが、オーラヴに解放された。

ソールズ・ボラソン Thord Bolasson 3, 4, 7
スウェーデン王オーロフ・シェトコーヌングの従士にしてお抱え詩人。
金髪の巻毛、淡青色の瞳。オーラヴとダグの友人。

ソーロールヴ Thorolv 2, 6, 7, 9
エストフォルド侯家の家令。オーラヴによると「侯家の生き字引」。


た ~ と

ダグ・ソルレイクソン Dag Thorleiksson 2 ~ 11
エストフォルド南部に農場を持つ豪族の末息子。
くすんだ金髪、蒼色の瞳。オーラヴに弟子入りした詩人。気のいい男で憎めないが、喧嘩っ早い。

ティーレ Thyre 9, 10, 11
デンマーク王スヴェン双髭王の妹、ヒルダの姉。

デーン人 Dane
本来はデンマーク人のことであるが、イングランドでは北欧人の総称。

デーン税 Danegeld
ヴァイキングの襲撃・掠奪を避けるため、イングランド王がヴァイキングに支払った退去料。

デーンロー Danelaw
ヴァイキング時代のイングランドにおけるデーン人(北欧人)の支配地域(ノーサンブリアからミッドランド南東部にかけての地域)。
主な定住地は、レスター、リンカーン、ノッティンガム、スタンフォード、ダービーで、これらを「ファイブバラ」と呼ぶ。

トール Thor
アース神族の一人。雷神にして北欧神話では最強の戦神でもある。稲妻を象徴するミョルニルと呼ばれる槌(ハンマー)を武器として持つ。ミョルニル(Thor's Hammer)を象ったお守り(ペンダント、ネックレスなど)が史跡などから数多く発見されていることから、この神への信仰心が高かったことがよく解る。ちなみに現代でも、スカンディナヴィア諸国(ノルウェー、スウェーデン、デンマーク)のお土産屋にて販売されている。


な ~ の

ニダロス Nidaros
ノルウェー中部、トレンデラグ地方に位置する町。現在のトロンハイム(ノルウェー第3の都市)。
997年、オーラヴ・トリュグヴァソン王によって築かれ、1217年までノルウェーの首都であった。町の中心部にある広場にトリュグヴァソン王の像が建つ。市内には王の名が付いた通りもある。

ノーサンブリア Northumbria
イングランド北部(スコットランドの一部を含む)、かつてのアングロサクソン七王国のひとつ。
ヴァイキング時代には、北はエディンバラ、南はヨークまでの地域を指した。


は ~ ほ

ハラルド・エリクソン Harald Eriksson  ss
オーラヴの兄。先代のエストフォルド侯。故人。

ハラルド・ゴルムソン 
実在したデンマーク王。故人。

ヒウェル・アプ・キーナン Hywel ap Cynan 5 ~ 11, ss
ウェールズ人の戦士。
黒髪の巻毛、濃緑色の瞳。リオナの戦士仲間。

ビザンティン帝国
ローマ帝国が東西に分割された西暦395年以後の東側の領域。東ローマ帝国、ビザンツ帝国ともいう。
帝都はコンスタンチノープル(現在のイスタンブール)。北欧人は、コンスタンチノープルをミクラガルズと呼んだ。『大きい町』の意味である。
中世期、皇帝の親衛隊に北欧人の部隊があったといわれ、彼らはヴァリャーグ、ヴァラング隊(Varangias) と呼ばれた。のちにノルウェー王になったハラルド苛烈王もこの隊の経験者である。
国民はギリシャ語を話し、高い文化水準を誇っていたが、1453年、オスマントルコによって滅ぼされた。

ヒルダ Hilda 1 ~ 11
ドイツ北部(神聖ローマ帝国領)の交易商人の娘。
アイルランド人の母から受け継いだ赤褐色の髪、夏空のような青色の瞳。物づくりが好きで、いずれ市場で自分の作品を売ってみたいと思っている。
何事にも前向きで、はっきりものを言う性格。意地っ張り。実は本人も知らない出生の秘密あり。

ブリスラフ Burizlaf 10
ヴェンドランド(現在のポーランド)の王。三人の娘がおり、グンヒルドはデンマーク王スヴェン、ゲイラはノルウェー王オーラヴ・トリュグヴァソン(即位前)、アストリーズはヨムスヴァイキングの首領シグヴァルディ侯の妻となった。

ヘゼビュー
現在のシュレスヴィヒ(北ドイツ)あたりに存在した町。ヴァイキング時代はデンマーク領で、主要な交易都市の一つであった。

ペチュネグ人
東方から南ロシア平原に移動してきたトルコ系の遊牧民族。
スカンディナヴィア、ロシアからコンスタンチノープルへ向かうには必ずドニエプル川を渡らなければならないが、そこで隊商を待ち受け、襲撃してくるペチュネグ人は交易商人たちにとって脅威であったという。


ま ~ も

マイリ Maire
ヒルダの母。故人。アイルランド出身。ヒルダの出生の秘密を解く鍵となる腕輪を娘に残した。

魔法使い
ヴァイキング時代の伝承「サガ」には、魔法使い・妖術使いがよく登場するが、北欧神話の最高神オーディンが魔術に長けた神でもあったため、信仰によってその力にあやかろうとした者がいたのではないかと推測。実際に魔法が使えたかどうかは不明である。

ミクラガルズ
ビザンティン帝国(東ローマ帝国)の帝都コンスタンチノープル(現在のイスタンブール)を、ヴァイキングはこう呼んだ。意味は「大きい町」。ヴァイキング時代における町の人口は四十万~五十万人といわれる。


や ~ よ

ヤール (侯) Jarl
ヴァイキング時代のスカンディナヴィアで、王に次ぐ権力を持っていた貴族。

ヨムスヴァイキング Jomsvikings
ヴェンドランドのヨムスボルグに拠点を置いていたといわれるヴァイキングの戦士団。首領はシグヴァルディ侯で、ヴェンドランド王ブリスラフの娘婿。

ヨルヴィーク Jorvik
イングランド北東部の町ヨークのこと。ヴァイキング時代には数多くの北欧人が移住し、ノルウェー人の王が支配した時期もあった(ヨーク王国)。通りの名前など、当時の地名が今も残っている。


ら ~ ろ

ラグナル・ギスラソン Ragnar Gislason 1, 9, 10
アストリーズの夫、デンマーク人。
金褐色の髪、碧色の瞳。スヴェン双髭王の血縁で、王よりヘゼビュー近郊に領地を賜る領主。

ラグナロク
北欧神話の神々と巨人族との最後の戦い。
オーディンは戦死した人間をヴァルハラと呼ばれる館に迎え、戦いに備えているといわれる。戦死者の魂をヴァルハラに連れて行く役目を担うのが戦乙女ヴァルキューレで、ワーグナーのオペラ 『ニーベルンゲンの指輪』 にも描かれている。
ヴァイキングの戦士たちは戦場で勇敢に戦って死ぬとヴァルハラへ行けると信じ、それは戦士として栄誉であると考えていた。

リオナ Riona 5 ~ 11, ss
楽師にして女戦士。アイルランド人。
赤褐色の髪、灰翠色の瞳。オーラヴの恩人で師匠。

ルーン文字
ラテン文字が入ってくる以前にゲルマン人が用いた文字。イングランドやドイツではキリスト教の普及とともに使用されなくなったが、北欧では11世紀頃まで使用された。
キリスト教が伝わるまで、ヴァイキングは紙に文字を書く習慣がなかったので、木・石・金属などに文字を刻んで使用したとみられる。ルーン石碑はスカンディナヴィア各地(とりわけスウェーデン)に残されている。


ワタリガラス
北米やユーラシア大陸北部に生息する鴉で、翼長1メートル前後あり、カラス科では最大。大鴉(オオガラス)ともいう。英語名 Raven (レイヴン)。
北欧神話の最高神オーディンに付き従う二羽の鴉フギン(思考 : 古ノルド語 Huginn 英語 Hugin)とムニン(記憶 : 古ノルド語 Muninn 英語 Munin)はこのワタリガラスであり、エストフォルド侯家の紋章にも使用されている。
ちなみに、日本では渡り鳥として北海道のみに飛来。



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